分類(採卵鶏):キジ科ヤケイ属    
原産地:東南アジア
日本への伝来時期:弥生時代
主な産地:茨城、千葉、愛知、広島、鹿児島

平成29年の全国の採卵鶏数(種鶏を除く)は、178,900,000羽でそのうちの13,433,000羽を茨城県が占め全国1位です。

🌱鶏卵の歴史
人間が鶏を飼育し始めた目的は、鶏卵をとるためではなく、時を告げる報(しん)用や闘鶏用として使うためでした。鶏は8,000年前に中国に渡来し、鶏卵だけでなく鶏肉も食材として利用されるよう大幅に改良されました。その後西アジア、東ヨーロッパに、そしてローマ経由で西ヨーロッパに広がりました。
鶏卵を食用として利用するために、古代ローマ人は卵を沢山産むよう鶏の改良を始めました。1870年になると人工孵卵器が発明され就巣性のない採卵鶏の系統の増殖を可能とし、産卵性が改良されました。

日本には朝鮮半島経由で渡来し、古墳時代から奈良時代にかけて、愛玩用、卵闘用、報晨用として飼育されてきました。『古事記』には報晨に用いたことや庭先飼育の記述があります。江戸時代になると外観の美しさ、鳴き声の長さなどの改良が行われました。江戸時代後期には、現在天然記念物に指定されている「尾長鶏」などの17品種が成立しました。これら日本鶏が産む卵は褐色の卵殻です。明治維新以降、欧米から白色の卵殻の卵を産む、卵肉兼用の品種が輸入され、採卵用鶏の利用が盛んになりました。大正時代にはオムレツなどの洋風料理がおかずとして食卓の定番となり、1925(大正14)年にはマヨネーズが発売され大ヒット商品となりました。第二次世界大戦以降、鶏卵の生産が大幅に増加し、安価な食品として安定供給されてきました。現在では、外食産業で鶏卵の消費が多くなり、調理加工済みの卵の製造・利用が増加しています。

🌱卵の構造と殻色
卵は可食部の卵黄と卵白を、卵殻が容器として包んでいる卵黄成分は卵黄膜に包まれて卵の中央にあり、卵白が包んだ状態で卵殻内に共存している食材です。卵殻は白色の白玉と褐色の赤玉が一般的ですが、その色は遺伝形質で、卵殻の表面に沈着するプロトポルフィリンの量の違いによって生じるものです。この色素量が多い品種は褐色になり、白色卵はプロトポルフィリンが少ないものです。アローカナ種の卵はビリベルジンにより、青緑色という特殊な色の卵殻です。

🌱卵の栄養
卵はタンパク質、脂質、カルシウム、リン、ミネラル、ビタミンの栄養素をバランスよく含まれていることからスーパーフードと言われています。中でも、タンパク質を構成する必須アミノ酸が豊富で、卵2個で1日に必要なたんぱく質の約26%をとることができます。一般的な例として体重が50㎏の場合は、50gの摂取が必要量です。この動物性タンパク質は、植物性タンパク質と違い、脳神経の活性化や血液をつくるビタミンB群、赤血球の材料のヘム鉄が含まれています。

🌱卵とコレステロールの誤解
コレステロールは悪いイメージがありますが、ヒトの体内の細胞の膜や脳の情報伝達物質、ホルモンの材料となり、細胞や脳の機能保持や生体をスムーズに機能させるためにかかせない物質です。悪いイメージが広がったのは1913年にロシアの病理学者ニコライ・アニチコアによる実験で、ウサギにコレステロールを大量に投与したところ、動脈硬化が起こったことがきっかけです。しかし、ウサギは草食動物であり、ヒトとは違う消化機能を持っています。ヒトは健康であればコレステロールを摂取しても、生体恒常性(ホメオスタシス)により、コレステロール量が常時一定に保たれるので、安心して卵を食べることができます。

 参考文献:
・『地域食材大百科 第4巻 乳・肉・卵,昆虫,山菜・野草,きのこ』2010年発行
・『卵を食べれば全部よくなる』 2014年発行
・農林水産省 畜産統計調査 排卵鶏 全国農業地域・都道府県別 飼養戸数・羽数(平成2921日調査)