今回、インタビューにご協力いただいた方は、

有限会社中村養鶏場 中村 強さん です。

たむら塾ホームページ第5回目は「鶏卵」について特集します。
(※この記事は2018128日のインタビューをもとに作成しました。)

 前回の「ニラ」に引き続き、宮内保明さんに中村養鶏場までご案内いただき、中村さんとそのご家族にお話しを伺いました。

    (有)中村養鶏場  
     中村 強さん           

昭和44年に卵が好きで養鶏業を始めました。飼料衛生管理の徹底した農場で、2009年にコープネット(1)指定農場に選定されました。現在、18万羽の採卵鶏を飼育し、年間5千万個以上の卵(白玉・赤玉)を生産しています。生食できる安心・安全な卵の生産し、皆さんへお届けします(o^_^o)         

小美玉と鶏卵

養鶏業を始めたきっかけを教えてください。
もともと小美玉市に土地を持っていたので、妻と一緒に何か事業をやりたいという考えがありました。当時の農業組合が鶏卵の生産を推奨しており、養鶏業が盛んでしたが、生産者たちが儲からないとの理由で退いた頃に私は始めました。
ヒヨコを飼っているところで何か月か勉強をさせてもらい、最初は農協の事業と共に5,000羽の鶏を神奈川県や埼玉県などの都市化が進んでいた地域から買いました。同じように都市部から鶏を飼っている人が茨城の小美玉市周辺に進出してきました。仲間の生産者も4、5人おりましたが、考えの違いにより農協から独立して今に至ります。

小美玉市が鶏卵の生産が盛んな理由は何ですか?
近くに百里基地(※2)があり、基地の周りは畜産農家が多いのです。また、鹿島港の開発が進んで、エサ工場が集まりました。出荷先の東京の市場とエサの物流距離が短いこと、暑くもなく寒くもない気候という好条件により、小美玉市で養鶏業を営む人が増えていったのです。今では茨城県が卵の生産量日本一、県内の生産量は小美玉市が1位になりました。茨城県に1,100万~1,200万羽いるうちの400万羽の採卵鶏が小美玉市にいます。

養鶏最大の被害

鳥インフルエンザの時はどれほどの被害がありましたか?
平成17~18年にかけて茨城県で鳥インフルエンザ(※3)の血液検査をしたら陽性反応が出て、私の養鶏場の13万羽も含め、500万羽が殺処分されました。ちょうど上り坂の時でしたから大変でした。国の支援もあり、ここまで盛り返せましたが、損害額は何百億で、検査などで再開するのに1年かかり、その間に全部の販売ルートを切られてしまいました。そこからまた新しいルートを探すのに大変苦労しました。鶏を出し入れして、生産量を安定させるローテーションを組むのも2年かかりました。

鶏の出し入れというのは?
私のところではヒナが孵って740日(約2年)で廃鶏とし、食肉加工場に出荷します。処理場に回される鶏の70%は3日に2個卵をまだ産めますが、品質の面でもこの業界は競争が厳しいので、出荷してしまいます。施設1棟に大体25,000羽のロット数(※4)で入荷した鶏を一気に入れ替えねばなりません。入ってくるときは1羽1,000円しますが、採卵後に出荷するときは100円以下になってしまいます。

鶏舎

私の養鶏場にはウインドレス鶏舎高床式鶏舎の2種類があります。
ウインドレス鶏舎は6棟あり、それぞれに給餌機と飼料タンクがついています。給餌時間になると鶏舎内に自動で供給されます。温度も機械で管理し、密閉なので病害からも守れます。生き物なので12回は異常がないか見回りをしています。

1羽の1日のエサ量はどのくらいですか?
基本は1日で110gです。冬は120gと増え、夏は100gと減ります。鶏はとくに暑さに弱く、100g食べないと夏バテになっている状態で、いい卵を産めません。

ウインドレス鶏舎

ウインドレス鶏舎で産まれた卵はコンベアーを通って集卵施設に流れ着きます。

8時から午後2時まで稼働し、洗浄・目視検査後、機械でパック詰めをし、台車に積んで出荷という流れになります

高床式鶏舎

ここにいる鶏たちはあと2週間で廃鶏になります。機械のスイッチを押してローラーをまわすと、手前に卵が流れてきます。今は寒いのでカーテンを閉め切っていますが、鶏が出荷されると、次の鶏が入る前に窓を全部開放し、掃除・水洗・消毒・乾燥をします。

鶏卵の相場

今年の平均値は195円で平均値、安値は7年ぶりに200円を下回りました。相場は12月でいちばん高くなり、1月になると数十円もガクンと下がります。

赤玉と白玉で生産性の違いはありますか?
生産性が良いのは白玉のほうですが、1年で35個の違いで赤玉が少ないだけです。赤玉を生活協同組合に6割出荷しています。全国的にみると赤玉の生産量は2025%ほどです。

鶏糞とニラ

先ほどニラ農家(川島さん)にインタビューしたとき、元肥に発酵鶏糞を使っているとおっしゃっていたのですがニラ農家とのご関係は?
この地域は養鶏業が先に始まりました。当初は糞の処理に困り、垂れ流しがたくさんありました。現在は糞処理施設を持つ義務があります。ニラが産地普及してからは、元肥に発酵鶏糞を入れると良いということで、ニラ農家に発酵鶏糞を売ることになりました。供給過剰なほどありますから、ただ同然で売っています。ニラ農家としては発酵鶏糞は肥料成分もよく、肥料代の負担も減る、こちらは糞の処理ができるというウィン・ウィンな関係を築けています。

今後の展望を教えてください。
人口減少もあり、供給過剰になっています。生産体制としては日本は飼料となるトウモロコシなどの穀物が海外から安価に輸入できるので、20円前後で食べられる卵を作ることができているのではないかと思います。これまでは卵の過剰摂取はコレステロールの数値を上げるということから敬遠されていましたが、34年前から1日の卵の摂取量を制限しなくとも、健康上問題ないと医学的に証明されるようになりました。現在、日本人1人当たりの年間消費量は333個ほどです。今後は12個食べていただいて、健康な体を作ってほしいです。動物性たんぱく質を摂取するのに卵は手頃なので、そういう面では、生鮮食品である卵は日本国内で生産することが必須条件だと思います。

以上、小美玉市より鶏卵産地インタビューでした。
新鮮な卵をいただきました。中村さんありがとうございました。


※1 コープ
「生活協同組合」のことで、消費者一人ひとりが資金を出し合い組合員となり、協同で運営・利用する組織。「コープ」…「協同組合」を表す「Co-operative(コーペラティブ)」の「Co-op」をとって日本語読みにしたもの。
参照:https://jccu.coop/about/

※2 百里基地
関東で唯一の戦闘航空団が所在する航空基地であり、基地の総面積は約425平方メートル(坪数129万坪)、滑走路は約2,700メートルある。
参照:http://www.mod.go.jp/asdf/hyakuri/base.html

※3 鳥インフルエンザ
鳥類に対して感染性を示すA型インフルエンザウイルスのヒトへの感染症のこと。
参照:https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou02/qa.html

※4 ロット
同種の製品や部品を生産する際の最小単位として使用されている言葉で、ロットの基準は、生産する製品の性質などによって異なるため一般的な取り決めはなく、製造者側が自由に決めることができる。
参照:https://04510.jp/times/articles/-/3398?page=1