分類:ユリ科ネギ属
別名:「ねぶか」、「ひともじ」、「き」
原産地:明らかにされていません。中国西部には古書に「山の上に葱を生ずる」と記されている葱嶺があり、原始時代から漢民族がネギを栽培していたと考えられています。
日本の主な産地:千葉、埼玉、茨城、群馬、北海道、新潟、鳥取、福島、福岡

2018年の全国の収穫量は91,500トンあり、そのうちの15,400トンを茨城県が占め、全国1位を誇ります。なかでも茨城県南西地域の坂東市は夏ネギの生産が盛んです。

🌱ネギの伝来
日本への伝来時期は明らかではありませんが、『日本書記』の仁賢天皇の記述(490)に「秋葱」、『本草和名』(918)に「和名岐」、『和名抄』(931)には「葱、和名紀」、冬葱を「布由木」と記されていることから、かなり古い時代からネギが栽培されていたそうです。また、日本に伝播される以前に太ネギ(根深ネギ)と葉ネギ(分げつネギ)に分化されており、両者が日本に渡来して全国へ普及し、それぞれの地域に土着したとされます。江戸時代の農書『農業全書』(1696年)には「冬の葱を大葱、春夏の葱を小葱」といい、小葱は株分かれをする分げつ性のものであり、「刈葱」、「分葱」についても記述があります。根深ネギのほうが質がいいこと、その栽培方法まで述べており、現在のネギ栽培の一端はすでに300年以上前に確立されていました。

🌱あのニオイの秘密
ネギは古くから薬用的野菜として重宝されました。ネギがもつ特有のにおいのもとであるアリシンという成分がビタミンB1を活性化して、強い殺菌作用を起こします。さらに健胃、利尿、発汗、整腸、駆虫、去痰などの薬効作用があります。また、他の野菜はアルカリ食品であるが、ネギは硫化アリルを含み、体内で硫酸を生じて酸性となることから、酸性食品といえます。発芽してから抽台するまでどの生育段階でも食用として利用できます。緑色の部分は料理の彩に、白い部分は辛味や甘味を持つことから様々な料理に活かされています。しかし、ネギが主役の料理は少なく、脇役として料理に利用されています。

🌱栽培方法 
ネギは太ネギや根深ネギと呼ばれる「大ネギ」と葉ネギや分げつネギと呼ばれる「小ネギ」の二系統に分けられます。根深ネギは一般に長ネギとも呼ばれています。元々は温帯性の野菜であるネギですが、耐寒性も強い珍しい野菜で、気候適応性が広いです。一方、乾燥に強いが、多湿に弱い傾向があり、このことが耕土の深い地帯での大ネギと耕土の浅い地帯での小ネギという系統分化を生みました。変異性が少なく、交雑性も少ないことから特徴的な品種も少ないです。代表的な品種は、葉ネギだと京都の「九条ネギ」、根深ネギだと群馬の「下仁田ネギ」があります。近年の栽培方法は、ハウス内に直播して葉鞘部(白い部分)を反射フィルムや発泡スチロール板で両側から挟み、日光を遮断して軟白する「軟白法」という栽培が多くみられます。土を寄せないので、うね間をとる必要がなく土地利用率が高いこと、根付けや土寄せ作業が省略され、軽作業化できる特徴があります。

参考文献:
・『地域食材大百科 第2巻 野菜』2010年発行
・『地方野菜大全』2002年発行
・農林水産省 作物統計 平成29年産春野菜、夏秋野菜等の季節品目別作付面積、10a当たり収量、収穫量及び出荷量(全国) 夏ねぎ