今回、インタビューにご協力いただいた方は…
川島 徳治さん・宮内 保明さん です。

たむら塾ホームページ第4回目は「ニラ」についての特集です。
※この記事は2018128日のインタビューをもとに作成しました。

 宮内保明さんにご案内いただき、山野公民館でニラ農家の川島さんと待ち合わせをし、川島さん家でお話しを聞かせていただいました。

川島 徳治さん

ニラ農家2代目として父親の跡を継ぎ、今年で15年目となり、JA新ひたち野小川ニラ部会の部会長を務めています。

JA新ひたち野小川ニラ部会(※1)
会員40名ほどおり、上は75歳、下は20代と幅広い年齢層で成り立っています。石岡市・旧小川地区・旧美野里地区の農協が合併してJA新ひたち野となりました。銘柄産地に指定されており、部会員はエコファーマーの認定を受けています。

川島さん家の栽培面積はどのくらいありますか?
ハウスと露地で栽培しており、ハウスは84棟あり、1年目に養成し、2年目に収穫というサイクルを42棟ずつに分けて栽培しています。露地は2町歩ほどあり、1年目に養成し、2~3年目に収穫をします。自分の土地もありますが、ニラは水がないと夏は育たないので、井戸が近くにある借地でも栽培しています。

収穫してから次に収穫するまでどのくらいかかりますか?
刈ってから30日で収穫できるまでに伸びます。夏は休ませますが、年間で6回ほど採れます。

肥料はどんなものを使っていますか?
元肥には「発酵鶏糞」を使っています。小美玉は鶏卵の生産量が日本一です。発酵鶏糞は近隣の養鶏場から調達することができます。しかし、発酵鶏糞はリンが多いのでその分「化成肥料(※2)」でリンが少ないモノを使用しています。即効性の肥料ではなく、1度やれば200日もつ遅効性の肥料です。

ニラ農家の従業員

従業員は何人雇っているのですか?
家族経営という名目ですが、私とパートの方1人と中国人実習生5人でやっています。実習生たちはこの作業場の2階に住んでいます。中国で3か月日本語の勉強をしてから、日本の実習生養成所で1か月勉強して、うちに派遣されました。

出荷までの流れ

まず1110gに測り、機械のエアーでニラの元を掃除します。音が大きいので耳栓をして作業しています。ニラの元をテープで結束し、ビニール1袋に1.1㎏ずつ入れ、それを箱に4袋ずつ入れて出荷という流れです。

1束載せると自動でテープを巻いてくれる機械もあります。

何の品種を栽培していますか?
冬はサカタのタネの「グリーンロード(※3)」夏は武蔵野種苗園の「パワフルグリーンベルト(※4)」を主に栽培しています。年中出荷するニラは季節によって品種を変えています。私の部会ではパワフルグリーンベルト以外は露地栽培で出荷できないという決まりがあります。

年間どのくらい出荷されますか?
2万ケース弱出荷しています。今年は猛暑や少雨の影響で出荷量が減り、市場からの要望に応えられませんでした。暑さ対策としてハウスに遮光ネットをかけたりしますが、これを来年から部会で補助して、農家の皆さんにやってもらおうと考えています。

夏と冬のニラで甘みなど違いはありますか?
冬のニラの一番刈りが葉が肉厚で甘みがあり美味しいです。球根を育成して最初に育ったものです。12月から1月にかけて新株から育成しますが、来年はより肉厚で美味しいニラができると思います。

ニラ農家の苦悩

栽培で大変なことは何ですか?
ニラはマイナーな作物なので登録農薬(※5)があまりありません。登録農薬の中で使用基準・使用回数を守って栽培していくのに苦労しています。特に夏の露地栽培では4日に1回農薬をかけないと病気・害虫によってニラが真っ白になってしまいます。雑草も多く生えてきて、ニラが光合成できず生育を妨げてしまうので、草取りをするのも大変です。
トラックに積んであるニラは2日分のゴミです。毎回これだけの量のゴミ(黄変したり、萎れたりした部分など)が出ます。

…車で5分のハウスへ移動…

ここはハウスが22棟あります。父親がやっていた頃はこのうちの14棟でやっていました。

ハウスの温度調節はどのようにしていますか?
開け閉めして換気している方もいますが、私はそこに手間をかけていません。ニラは寒さにあたると伸びないので、まだ暖かいうちは2重ハウスですが、寒くなると3重ハウスにします。

このハウスでどのくらいのニラが収穫できますか?
新株だとハウス1メートルで1箱分収穫できます。ここは50メートルハウスなので50箱くらいです。5人で刈って1時間もかかりません。

水やりはどのようにされていますか?
井戸からハウスまで配管して、細かい穴の開いたホースでシャワーのように浴びせます。人間も飲める水なので安心・安全です。

おすすめの料理を教えてください。
私の家では週一で妻がニラギョーザを作ってくれます。ニラ料理でいちばん好きです。この辺ではみそ汁にニラをいれて食べたりもします。

 

今後の展望を教えてください。
ここのニラ部会は比較的若い人が多く、後継者もいるので将来に問題はありません。私の家は息子たちもいるので、跡を継いでもらえたら嬉しいですね。

以上、ニラ生産者インタビューでした。
川島さん、従業員の方、宮内さん、ありがとうございました。

※1 JA新ひたち野小川ニラ部会
2015年2月1日より、組合員間の連携を一層強化するため石岡地域の3つの農業協同組合が合併し、JA新ひたち野として発足。小川ニラ部会は作付け面積85ヘクタール。農家に整備された予冷設備で、収穫してすぐに低温状態にし、新鮮な状態で通年出荷している。
平成14年度の2月に持続型農業生産方式導入の認定を受け、施肥管理を見直し、多肥多収生産から環境と調和した、生産方式に取り組んでいる。
参照:http://www.shin-hitachino.com/contents/aboutja.html

※2 化成肥料
無機物を原料とした肥料のことで、無機物の栄養分1つのみを含む肥料を「単肥」、無機物を化学的に合成した肥料を「複合肥料」と呼ぶ。複合肥料の中でも、窒素・リン酸・カリウムの内2成分以上を含んだものを「化成肥料」という。
参照:https://agri.mynavi.jp/2018_06_22_29786/

※3 グリーンロード
葉幅が広く、刈り取り後の再生が早いので多く収穫できる。葉鞘部が長く収穫の調整作業がしやすい。7月中旬頃からトウ立ちが始まり、11下旬頃から休眠が始まる。
参照:『地域食材大百科 第2巻 野菜』

※4 パワフルグリーンベルト
葉は濃い色で、葉肉が厚く市場性が高い夏どり専用品種である。6月中旬にトウ立ちし、8月に収穫ができる。株腐細菌病の発生が少ない。
参照:『地域食材大百科 第2巻 野菜』

※5 登録農薬
農薬の安全性は、国の登録制度によって審査され、作物への残留や水産動植物への影響に関する基準が設定され、基準を超えないよう使用方法が定められている。登録された農薬だけが製造、輸入及び販売できるという仕組みである。
参照:http://www.maff.go.jp/j/nouyaku/n_tisiki/tisiki.html##kiso3