今回、インタビューにご協力いただいた方は、
武田商店 武田 芳樹さん です。

 たむら塾ホームページ第6回目は「レンコン」について特集します。
(※この記事は20181214日のインタビューをもとに作成しました。)

 武田さんと10時に常陽銀行出島支店で待ち合わせをし、早速レンコン畑にご案内していただき、お話を聞きました。

武田商店
    武田芳樹さん
かすみがうら市の市役所職員を58歳で退職後、レンコンの栽培・販売をはじめ、10年目となります。

なぜ市役所職員からレンコン生産者になったのですか?
定年退職後の年金暮らしを考えた時に生活していけないと思い、レンコンの栽培をやろうと決めていました。58歳で退職したのは、定年まで勤務していたら体力的に持たないと思い、少し早めに辞めたのです。農業・環境・福祉の3択で迷っていましたが、農業が始めるのに一番手っ取り早いですし、近所にハス畑があって生計が成り立つと聞いていたので、レンコンの栽培を始めました。始めるときは、スコップと草刈り機があったくらいで、土地も全部借りて、洗い場も建てました。

蓮田

この蓮田の面積や深さはどのくらいありますか?
ここは約4反歩(=約40アール)あります。立つと膝上くらいの深さで3040センチになります。田んぼによっては深さ70センチにもなります。

1日の作業

今は収穫期なので、朝6時から収穫し、午後2時から洗浄・梱包します。今日収穫したものは、翌日に農協へ出荷します。
井戸から水をくみ上げホースで畑のエンジンポンプにつなぎ、ホースの先から水を出して泥水を掻き分けながらレンコンを収穫します。この時、レンコンに水を直接あてると傷になるので、気を付けながら周りの泥をとるようにしています。

井戸水や蓮田の水温は何度ですか?
地下を流れている井戸水は14度くらいです。しかし、ここは谷津田といい、山と山の間にある田んぼで、山の斜面から清水が流れてきます。この清水は、部分的にパイプで配水している地下水とは異なり、冬は氷が張り、夏は30度近くなることもあります。比較的水が冷たいので、レンコン栽培の条件としてはあまりよくないですが、前にこの蓮田を使っていた人が辞めると聞いたので、この谷津田を借りました。レンコンは霞ヶ浦沿岸の湿地帯でないと栽培できないイメージがありましたが、私は違うと思っていました。用水と排水路があれば作っていて何とかなります。

蓮田を耕すときはどのようにしているのですか?
座高の高い耕運機を使っています。浮袋をつけて沈まないようにしています。収穫したものはレンコンボードに載せて洗い場へ運びます。日に当たるとレンコンに泥が染みて色が抜けなくなってしまうので、水を含ませた布をかぶせます。

レンコンの品種と収穫量 ※1

収穫したのは何という品種ですか?
「金澄20号」です。この他に「幸祝」と「金澄38号」を生産しています。私のところでは主に金澄20号が生産も安定しており、味も良いので栽培しています。レンコンは30種類以上あり、かすみがうらの農家の人は10種類以上の品種を栽培しています。中でも金澄系を生産している方が多いようです。

1日にどのくらい収穫するのですか?平均で8艘くらいです。1艘当たり60㎏入るので、480㎏くらいですね。

短命な花

赤い花と白い花がありますが、どう違うのですか?
主に赤い花は在来種で白い花は改良種です。改良種の方が良いです。品種改良が進むにつれ、大きくて美味しいレンコンになっていっています。しかし何年か栽培して取り残しがあると、自然と在来種に戻り、赤い花が咲いてしまいます。レンコンの花は7月からお盆頃まで一面に咲きますが、4日で散ってしまいます。いつも咲いているように見えますが、それは次から次へと咲いているからです。3日目の花が一番きれいです。

花や葉はどうするのですか?
花は自然と散り、葉は11月頃から枯れ始め、全部土に還ります。手を加えることはあまりしないです。レンコンの種は発芽すると違う品種になることがあるのです。どこからか花粉が飛んできて交配するので前のモノと違うものができてしまいます。なので、翌年の生産準備のためには「レンコンの種」ではなく「種バス」を使います。

種バス

レンコンはどのように増やしていくのですか?
45月に種バスを10分の1残します。それを植え付けると10倍に増えるのです。種バスは良さそうなものを前の年に予め確保しておきます。約10年前にレンコンの栽培を始めた時には、10アール栽培するのに種バス代は20万円かかりました。

種バスは何世代使えるのですか?
色々な品種が混じり、本来の改良種とか変わっていく可能性がありますが、半永久的に使えます。

車で3分ほどの洗い場へ移動し、作業の様子を見させていただきました。

レンコンの洗い場

レンコンの端を包丁で切られているのはなぜですか?
中に泥が入っている場合があるので、切って中を確認して泥が入っていたら洗い出します。

従業員は何人雇っているのですか?
5名雇っており、そのうち3人は中国人実習生です。かすみがうら市のレンコン農家は200軒ほどありますが、ほぼ4分の113人くらいの実習生を雇っています。10町歩以上の大規模生産している農家は78人雇っているようです。

段ボールに等級Mと書いてありますが、それに該当しないものはどうするのですか?
Мサイズが基準で1400g1400gです。他にSSSサイズがあり、Mの横に赤色でサイズを書きます。また、品質の悪いものはMを○で囲みます。

栽培で大変なことは何ですか?
冬は防寒作業着を着て水に入るので、見た目ほど寒くはありませんが、朝、作業着に着替えるときが一番寒いです。長時間水の中で作業するので膝や腰を痛めてしまう人が多いです。夏は除草作業のときにカッパを着るので、とにかく暑いです。1年中仕事があるので大変です。45月は植え、67月は除草、8月~3月にかけて収穫です。唯一休めるとしたら7月くらいです。

水中は、どのような虫の被害が多いのでしょうか?
センチュウという虫がレンコンの根に住み着いてしまうと大変です。センチュウが食べたところは黒い点ができ、長い期間置いておくと、点が肥大して中まで浸透してしまい、商品として売れなくなってしまいます。この虫は特効薬がないので現状悩まされています。6月からはアブラムシの消毒、7月にはイネネクイハムシの消毒は必ずします。

農薬はどこにどのように使うのですか?
イネネクイハムシはレンコンを食べてしまうので、植えるときに薬をふります。アブラムシは茎が真っ黒にされてしまうので、水和剤で消毒をしています。基本は23回消毒するらしいですが、私は年に1回以上やったことがありません。

栽培で大切にしていることは何ですか?
品質を大切にしています。栽培中は水を切らさないことが重要です。しかし、なかなか満足のいくレンコンができていないです。

おすすめのレンコン料理を教えてください。
天ぷらや油で素焼きして塩コショウをふって食べるのが美味しいです。あと、酢バス(2)もさっぱりしていて美味しいです。

今後の目標・展望を教えてください。
元気なうちはレンコン農家を続けていきたいです。最初はもう少し規模拡大をしようと思っていましたが、今が限度ですね。もうすぐ70歳になるので無理をしてもしょうがないです。
農家の人はすごいと思います。農家には農家の素晴らしさがあり、少し前に始めた私には到底真似できません。
レンコン農家はある程度収入もあり、若い人が後を継いでいます。しかし、レンコンは農業の中でも辛いイメージがあるので、それが少しでも払拭すればいいですね。

以上、かすみがうら市よりレンコン生産者インタビューでした。
沢山のレンコンをいただきました。
武田さん、従業員の皆さん、ありがとうございました。


1 レンコンの品種
中国種…明治時代初期に中国から導入した品種を改良したもの。比較的多く栽培されているのは、ふっくらと丸い「金澄」系や「だるま」系の品種で、金澄は中国種群と在来種群のレンコンを交配して誕生した。
在来種…江戸時代以前に日本に伝わり各地で根付いたもの。中国種に比べると細長く少し茶色がかった色をしていて、肉質は粘質でやわらかく味がよいとされるが、根が深くて生産量が少ないため、あまり流通はしていない。
(参照:https://www.yasainavi.com/zukan/renkon.htm)

2 酢バス
レンコンの皮をむいて薄切りにし、酢水にさらしてからさっと茹でる。合わせ酢につけ、柚子の千切りや赤唐辛子を加える。酢バスにしておくと、サラダや寿司など色々な料理に使え、長期保存も可能となる。
(参照:JA土浦のれんこん パンフレットより)