分類:サトイモ科コンニャク属の多年生植物
原産地:インドまたはインドシナ半島
日本の主な産地:群馬、栃木、茨城、福島

🌱コンニャク芋の生産
明治40年~昭和30年くらいまでのコンニャク芋収穫高の順位は激しく入れ替わっていました。しかし、昭和40年代から群馬県の生産量が急速に伸び、他県の生産量の減少もあり、今では収穫量の90%を群馬県が占めています。平成29年産コンニャク芋収穫量は全国で61,300トンであり、このうち群馬県の収穫量は56,500トンで、前年産に比べ2,300トン増加しました。

🌱コンニャク芋の品種
日本で栽培されているコンニャクの品種は在来種、備中種、支那種があります。これらの品種交配から、昭和30年代から群馬県で「はるなくろ」、「あかぎおおだま」、「みょうぎゆたか」、「みやままさり」4種が育成され、改良種が誕生しました。
在来種:品質は最も良い。病気や災害に弱い。
備中種:在来種よりも病害や気象災害に強い。
温がやや高く、日射の強いところでも栽培できるの。品質は劣る。
支那種:晩成なので秋遅くまで生育できる低標高地帯での栽培が適している。
腐敗病に最も弱い。
はるなくろ:母が支那種、父が在来種
在来種より気象災害には強いが、病気に弱い。
あかぎおおだま:母が支那種、父が金島在来種(在来種の一系統)。
みょうぎゆたか:母が群系26、父が富岡支那種(支那種の一系統)。
気象災害や病気に強い。
みやままさり:母が群系55(支那種と備中種の交配系統)、父が富岡支那種
病気に比較的強い。
日本に生育するコンニャク以外のコンニャク属植物は「ヤマコンニャク」だけで、四国・九州に分布しています。それに対し、東南アジアでは「ムカゴコンニャク」、「ツリガネコンニャク」などの種類がみられ、中国には19種も分布しています。しかし、食用のこんにゃくの原料であるグルコマンナンを含む種類は、「イロガワリコンニャク」、「ジャワムカゴコンニャク」程度で、私たちが食しているコンニャクをつくることができる種類は少ないのです。

🌱いもこんにゃくと粉こんにゃく
いもこんにゃく」は芋から直接つくるため、芋の中の微妙な味や香りの成分により、特有の風味があります。「粉こんにゃく」は精製されたこんにゃく粉からつくるため、風味がなく、無味でクセがありません。
※いもこんにゃくはコンニャクマンナン以外の成分を含むため、粉こんにゃくよりも腐敗が速いです。

🌱粉コンニャクの発祥地
常陸国(茨城県)でコンニャク栽培が始まったのは江戸時代と言われています。大子町は約8割が山間部で、水はけの良い土質、日当たりのよい傾斜地という好条件から、在来種を栽培していました。この特有の土地を利用して栽培できるコンニャクは重要な換金作物であり、ほとんどの農家がコンニャクを栽培していました。しかし、コンニャク芋は腐敗しやすく、長期保存のきかない作物で、水分が多くて重いことから流通に向いていませんでした。そこで、常陸国に生まれた中島藤右衛門がコンニャク芋を乾燥させて粉にする方法を考案し、軽量で長期保存の可能な流通のきくコンニャク粉を生み出しました。コンニャク芋を薄く切って串に刺し、乾燥させたら串から外します。この外したものを「アラコ」といいます。水戸藩はコンニャクを専売制にし、袋田に蒟蒻会所を設置し、コンニャク粉の品質を管理しました。そして、中島藤右衛門の栽培方法を奨励し、コンニャク粉は大阪まで流通し、水戸藩の財政を潤したのです。明治時代になると、水戸藩の専売制はなくなり、農家はアラコを製造したら、仲買人に売り、製粉業者が農家や仲買人から買って、製粉していました。昭和40年代になると、アラコを仲買人に売るのではなく、生玉のまま出荷する方法に変わりました。また、コンニャク芋の価格が下がったことによって、利益が下がり、人手不足も相まってコンニャク栽培をやめる農家が増えていきました。

🌱コンニャクの効能
便秘解消の効果があり、腸内の老廃物を押し出してくれる食物繊維が多いことから「腹の砂払い」といわれています。また、生いもからこんにゃく粉を精粉したときの残留物「とび粉」に含まれる成分には血圧降下、コレステロール低下などの機能があります。

🌱コンニャクの製造
こんにゃくは東アジアの広い地域で食されています。中国の雲南省、四川省などではかなり一般的な食べ物として食されており、「魔芋豆腐(もうとうふ)」と呼んでいるそうです。平安時代の『倭名類聚抄』に作り方が紹介されており、古くから利用されていたのが分かります。江戸時代『蒟蒻百珍』には82種類ものこんにゃく料理が紹介されており、さしみ、田楽など今でもなじみの深いものから手の込んだものまでさまざま記載されています。保冷庫などない時代、魚介類の刺身に近い食感を味わえるコンニャクは今よりもっと貴重かつ一般に親しまれた食品でした。
こんにゃくは、基本的に水、こんにゃく粉、凝固剤からできる食品です。家庭での作り方の例は…
①いもの表面を洗い、土などを落とす。
②丸ごと30分茹でるか蒸かす。
③角切りにしたものをミキサーにいれる。
④水を入れながら粉砕する。
⑤1~2時間(途中何回かこねる)放置する。
⑥石灰水を加え、全体が均一になるようこねる。
⑦別の容器に移し、1時間放置する。
⑧塊のまま表面がかたく締まってくるまで水でゆがく。
⑨徐々に切って適当な大きさにし、冷蔵庫に置いて完成!
「弾力があり、適度な硬さをもつ」ものが品質が良いとされ、主成分であるコンニャクマンナンの濃度が高いほど歯ごたえのあるこんにゃくができます。煮物・和え物・汁物などの幅広い料理に使われており、決して主役にはなれませんが、ハレの日のごちそうでもあります。

参考文献:
・『地域食材大百科 第1巻 穀物,いも,豆類,種実』2010年発行
・『常陸大子のコンニャク栽培用具及び加工用具調査報告書』2016年発行
・『都道府県別地方野菜大全』2002年発行
・農林水産省 平成29年産作物統計(普通作物・飼料作物・工芸農作物)工芸農作物の収穫量 こんにゃくいも(主産県別)
・ルーラル電子図書館 日本の食生活全集