マグロ専門

仲卸業者インタビュー


今回、インタビューに応じていただいた仲卸業者の方は、

    ()()(ちょう)飯田(いいだ) (とう)一郎(いちろうさんです。


 ()樋長 8代目
       飯田 統一郎さん

樋長は、1861(明治6)創業以来、魚河岸で生マグロ・冷凍マグロの解体・販売をしています。現在の築地市場では約500の店がありますが、そのうちの約200店はマグロ屋が占めています。「つきぢ田村」の田村隆さんからお墨付きをいただいております。お客様のご要望に沿った上で最高のマグロをご提供いたします。どうぞ、樋長にお越しくださいませ!

取り扱っている3種のマグロ   ※1

取り扱っているマグロは何ですか。

樋長の冷凍庫に入っているマグロは3種類あります。ボストンの本マグロ・太平洋近海の本マグロ・南マグロです。本マグロはひとくくりになっていますが、学術的には太平洋マグロと大西洋マグロとに分かれています。最高級の本マグロは1kg4万円くらいします。

マグロによって身や味に違いはありますか。

南マグロ(インドマグロ)は、赤身と脂身が明確に分かれているので、中トロがあまりないです。普通のマグロには腹の真ん中に骨がないのですが、南マグロには骨があります。刺身にすると骨のせいで不格好になってしまいますので、まぐろのたたきなんかを扱う寿司屋向きのマグロです。いちばん大きくても200㎏までしかならないですが、マグロの中ではいちばん長生きで過去には45年くらい生きたという記録もあるみたいですよ。
本マグロ(クロマグロ)は、身が全体的にピンク色で、脂は植物性のサラッとした感じで甘味があります。とくに近海の本マグロは珍重されています。風味感があって、繊細なエサを食べているからマグロも繊細な味がします。今年の2月には460㎏の近海の本マグロを買ったんですけど、それは日本の記録で2番目の大きさのマグロでした。一番大きいのは、20年くらい前に水揚げされた495㎏のマグロです。

マグロを仕留めるモリ

箱に沢山入っているものは何ですか。
これはモリです。これでマグロを仕留めて水揚げします。日本のモリはステンレス製で、細いのでまっすぐ入りますが、外国のモリは真鍮製で太いので、曲がって入っていってしまいます。後者の場合、モリが見つけにくくなり、魚の中に残ったままの時があるんです。気づかずにそのような魚を機械にかけて刃がモリにあたってダメにしたことがありましたね。
モリを研磨剤で削るとピカピカになるんですよね。文鎮とかにして使う人もいます。

マグロに使う包丁

奥に長い包丁がたくさんありますが、昔から使っているんですか。

日本人がちょんまげをしていた時はノコギリや短い包丁でマグロを切っていていました。私たちは、長い卸し包丁で卸しています。でも長い包丁を使っているのは東京くらいですね。プロに魚を売っているので魚の断面がきれいに見えるように包丁を凄いこだわっています。この包丁は使えるのは5年くらいなので、大切に使っています。

巻き網漁と漁獲権の不安 ※2

マグロの漁獲規制はどうなっていますか。

現在、本マグロの漁獲割り当ては、6割が巻き網漁法で4割が沿岸の漁法です。巻き網で獲ると「ヤキ」といって、あげるときに暴れて体温が上がり身が悪くなってしまいます。このヤキが入ると生焼けのようになってしまい、しっとり感がなくなってしまいます。こうなると魚の価値が低くなり値段が下がります。また、産卵期の魚も一緒に獲ってしまうから、魚の数が減ってきています。資源を枯渇させる巻き網に漁獲高を沢山割り当てているのはおかしな話です。昔はメバチマグロは週末にいつも安売りしていましたが、今は激減しているので見かけません。唯一獲れているのはびんちょうマグロくらいですね。産まれて1年くらいで産卵しますので。この漁獲権については組合の常任理事として水産庁の会議で議論しましたが、答えが返ってこず、全く話が進んでおりません。この課題は今後も追求していきます。

プロの技

今のようにマグロを捌けるようになるまで、どのような修行と年数を積んでこられたのですか。

大体78年はかかったと記憶しています。修行というより実践での経験ですね。不思議なもので今はマグロを目の前にすると、どのように包丁が入っていくかイメージできるようになりました。

新たな目標

今後の目標について教えてください。

地球環境の変化により年々海の状況が悪くなっています。
マグロに対する理解とそのマグロをどのように最善の形でお客様と結びつけていくのか、それを極めていくのが目標です。


※1 Wikipediaのマグロ属構成種によると、マグロ属にあたるのは以下の8種類である。

(参照:https://ja.wikipedia.org/wiki/マグロ)

※2「TUNA QUEEN WEB SITE」代表的なマグロ漁法によると、代表的なマグロの漁法は延縄(はえなわ)、巻き網、定置網、一本釣りがある。
延縄…ブイのついた幹縄と呼ばれる一本の長いロープに先端の針に餌をつけた枝縄を多数垂らしてマグロを漁獲する漁法。
巻き網…マグロの群れを小型ボートで弧を描くようにして網で囲む漁法。
定置網…ある一定の時期に魚の通り道となる場所に網を仕掛け漁獲する方法。縦網を張ってマグロの進路をふさぎ、中央に仕掛けた箱網に誘導する。箱網は入ったら出られない仕組みになっており、入った魚は最後の揚げ網まで追い込まれ、そこで水揚げされる。
一本釣り…小型船で1本の釣り糸・釣り針で1本のマグロを漁獲する漁法
(参照:http://www.tunaqueen.com/minijiten/ryouhou.html